エチレン酢酸ビニルとは?
エチレン酢酸ビニルとは?
エチレン酢酸ビニル(Ethylene-vinyl acetate, EVA)とは、エチレン(C2)という単量体と酢酸ビニル(vinyl acetate)という単量体を共重合させて製造される合成樹脂です。EVA樹脂ともいわれます。
酢酸ビニルはチューインガムの原料としても用いられるものです。樹脂のなかの酢酸ビニル含有量(5%~35%)によって銘柄が区別されますが、エチレン酢酸ビニルの主な特徴は次のとおりです。
- 透明性がポリエチレンより優れる。
- 低温下で強度が落ちず、ポリエチレンより低温でヒートシールができる。
- ポリエチレンより保温性が優れる。
- ポリエチレンより柔軟であり弾力性に富む。
- 結晶性が低いので無機の充填材(炭酸カルシウムなど)を多く配合しても一定の強度が保てる。
- ポリエチレンと同じく競合材料のポリ塩化ビニル(PVC)より軽量である。
エチレン酢酸ビニルの主な用途は、
- フィルム・シート
- ホットメルト接着剤
- 発泡体
- 成形品
- ラミネート(積層体)のヒートシール層
- 難燃性ケーブル
などです。
(A)のフィルム・シートは、食品包装フィルムのヒートシール層、ガスバリア性の高い素材と複合化してチルドビーフ・ハム・ソーセージの包装フィルムの中間層やシール層に使われます。また、ポリ塩化ビニルと比較して強風に強く破れることがないことや軽く作業負担が軽減できることから農業用ハウスや鉄道・高速道路のトンネル用止水シートなどに使われます。
(B)のホットメルト接着剤は、溶剤を使用しない接着剤で衛生上優れるもので、80℃~130℃の熱を加えて被着箇所を溶融させ接着させます。エチレン酢酸ビニルはホットメルト接着剤では粘着付与材(タッキファイヤー)やワックス(粘度調整剤)とともに配合されます。ホットメルトを塗布した後の硬化が早いため高速で包装するものに大きな適性があり、トイレタリー用品の紙箱(カートン)や段ボール箱の封緘、また書籍の背表紙、電子部品の包装に多く使用されます。
(C)発泡体は、スニーカーやスポーツシューズの底材(衝撃吸収機能)、マンションの床材(木製の床の下に使用され音の吸収機能を果たす)などに使用されます。
(D)成形品は、人工芝や密封容器のフタなどがあり、(E)ラミネートのヒートシール層には、ホットカイロの包装袋に使用されています。また(F)難燃性ケーブルとしては、エチレン酢酸ビニルに相当量の非ハロゲン系難燃剤を配合して通信ケーブルの絶縁層に用いられます。非ハロゲン系なので高温下で燃焼しても有毒ガスが発生することはありません。
このようにエチレン酢酸ビニルはポリエチレンのある特性を一段と向上させたものですが、ポリ塩化ビニルと比較して軽く衛生性が優れている点を活用して、ポリ塩化ビニルを代替してきたものでもあります。
用語集
ポリ袋・ゴミ袋業界に関する用語に加え、化学品・合成樹脂業界に関する用語を幅広くまとめています。