可燃ごみの3分の1は宝の山。マシンガンズ滝沢さんと考えるごみ収集の未来

お笑いコンビ・マシンガンズとして活動しながら、現役のごみ清掃員として最前線に立ち続ける滝沢秀一さん。環境省サステナビリティ広報大使でもある滝沢さんが見つめるのは、日々の山のようなごみの先にある日本社会の課題です。「ごみの出し方一つで、コストも安全も変わる」と訴える現場のリアルな視点から、持続可能な未来へのヒントを紐解きます。
生ごみによる衛生問題と経済損失
――現場で最も「改善してほしい」と感じる点はどこでしょうか。
滝沢さん:何より生ごみの水分ですね。清掃車がごみをギューッと圧縮するとき、水分が多いと袋が破裂して、清掃員に汚水がはね返ってしまうんです。すぐに洗える環境もないので、衛生面でも精神面でも現場は本当に大変です。でもこれは、単に「現場の苦労話」にとどまりません。実は、自治体のコスト管理——つまりみなさんの税金にも大きく関わっています。たとえば多摩市の試算では、住民全員が片手でぎゅっと生ごみを絞るだけで1億円、両手で本気で絞れば3億円もの節税になるそうです。水分を含んだ生ごみを燃やすのは、言ってみれば「水を沸騰させている」ようなもの。余分な燃料コストがかかり、それだけ税金が失われているんです。
――自治体ひとつで億単位の差が出るのは驚きです。ほかにも衛生面で改善できるところはありますか。
滝沢さん:おむつなどの排泄物ごみです。一般的な可燃ごみと一緒にまとめて出されると、清掃車で押しつぶされたときに破裂するリスクが予見できません。ごみ袋を分けるか、色付きの専用袋にするなど、中身がひと目で判断できる仕組みが必要だと感じています。さらに、そうした袋を自治体が一時的にコントロールして保管できれば、災害時にトイレが使えなくなった際の備蓄としても役立つはずです。
可燃ごみは宝の山。資源を「返す」という意識
――分別の精度を上げるために必要な視点は何でしょうか。
滝沢さん:可燃ごみの中には、リサイクル可能な「紙」と「プラスチック」が約3分の1も混ざっています。これを資源に回すだけでごみ袋3つが2つに減る。日本人はごみを「自分のもの」という意識で捨てる人が多いかと思いますが、EUなどでは中身は商品だが、容器は借り物だから返す(=リサイクルする)という感覚が強い。この「返す」という意識改革が重要です。例えば、お弁当の容器を捨てずにサッと洗う。そのひと手間で、プラスチックは立派な資源に生まれ変わります。環境やコストの問題だけではなく、生ごみを絞り、紙とプラを資源に回せば、ごみ箱の臭いも少なくなり、居住・就業環境の向上にもつながります。
――わたしも最近はプラスチックを積極的に分別しているのですが、燃えるごみが目に見えて少なくなったことに驚きました。では、資源を分別したその先で、課題に感じている点はありますか。
滝沢さん:プラスチック資源のリサイクル方法です。日本では、燃やした熱をエネルギーに変えるサーマルリサイクルが主流ですが、これだと「結局燃やすなら、わざわざ分別しなくてもいいのでは?」と納得しにくいですよね。多少コストがかかったとしても、化学原料や燃料として再生するケミカルリサイクルを国策としてもっと推し進めるべきです。資源がしっかり循環する仕組みをつくるための税金の使い道なら、住民のみなさんもきっと納得して分別に協力してくれるのではないでしょうか。
住民を動かす「コミュニティ」の運営
――滝沢さんが取り組まれている「ごみクラブ」について教えてください。
滝沢さん:ごみクラブではオンラインでの意見交換やごみをテーマにしたイベント「ごみフェス」の開催など人と環境をつなぐ活動を行っています。また、東京の東中野では「100%失敗しないコンポスト」の運用もしています。廃棄するしかなかったカブトムシ屋さんの廃菌床(キノコの栽培跡)を活用して、生ごみを土に戻すサイクルを作っているんです。ここでは、基材とバッグの提供からコンポストに関する相談、堆肥の回収・有効活用まで私たちがサポートします。「ごみを捨てないで」と言うより、コミュニティを通じて、ごみを資源に変える楽しさを伝える方が住民は動きます。東中野での取り組みのように、地域の資源と住民の生活をつなげる循環の場を作ることが、これからの行政には求められていると感じます。
――ごみクラブのように、特定のターゲットへ届く場づくりが大切なのですね。活動の広がりについて教えてください。
滝沢さん:一般社団法人を立ち上げ、全国でごみについて教えられる「ごみの先生」を育成しています。私の想いを受け継いだメンバーたちが、全国の学校へ出向いて講演をしたり、手作りの紙芝居の読み聞かせを行ったりしています。こうして草の根運動でごみ教育を担う先生を増やし、次世代へ正しい習慣をつなげていく活動が、少しずつ全国で育ってきています。実は、環境やごみに対する意識は、私たちが想像する以上に世代間で差があります。今、学校などでSDGs教育が始まって7〜8年が経ちますが、驚くことに二十歳前後の若い世代のほうが、環境意識が非常に高かったりするんです。若い子たちと一緒にスーパーに行くと、ごく自然に商品を手前から取っていく。「学校でそう習ったから習慣になっている」と言うんですね。私たちの世代は「奥から新鮮なものを取りなさい」と教わってきた家庭も多いので、教育や習慣の力がいかに大きいかを痛感します。子どもの頃に身についた習慣は、大人になっても当たり前に続けられます。5年後、10年後に大きな花を開く種まきとして、やはり教育が重要だと考えています。
――上の世代へのアプローチや、これからの啓発活動についてはどのようにお考えですか。
滝沢さん:今のシニア世代の方々が若い頃は、現在のような細かい分別のルールがありませんでした。そのため、当時の習慣のまま今に至っているケースもありますが、私のSNSを見て熱心にごみ出しを勉強し、コメントをくださる年配の方もたくさんいらっしゃいます。歴史の違いを理解し、根気強く伝えていく必要があると感じています。
ごみを減らすため、ごみ袋メーカーができること
――サニパックなどのごみ袋メーカーの役割についてはどう思われますか。
滝沢さん:ごみ袋って最初からごみになることが決まって生まれてくる唯一のものじゃないですか。だからこそ、燃焼時のCO₂に配慮されているnocoo(ノクー)などの製品はいいですね。あとはお花畑デザインのごみ袋(渋谷区推奨ごみ袋 nocoo)のように、景観に着目するアイデアは素晴らしいと思います。きれいに捨てようという気持ちにもなりますよね。
滝沢さん:一方で、清掃員から見て気になるのはごみ箱に入れると自動で密閉してくれるタイプのごみ袋です。利便性は高いのですが、風船のように膨らんで回収時に破裂しやすく、収集現場の負荷という面では課題があるなと感じます。品質を保ち、収集しやすく、役目を終えた後のことまで考えられている製品が増え、ごみ袋業界全体が盛り上がったらいいなと思います。それが環境問題への関心にもつながりますからね。
【おわりに】住民・行政・メーカーが協力してつくるごみ収集の未来
今回の滝沢さんのお話から見えてきたのは、ごみ収集の現場が抱える問題と、それを解決するために必要なアイデア、そして私たち一人ひとりのちょっとした気遣いの大切さです。「ただのごみ」だと思っていたものを「大切な資源」として次に引き継ぐ。そんな意識の変化こそが、豊かな社会を作る第一歩になります。
私たちメーカーの「使いやすさや安全への工夫」、行政の「分かりやすい発信や仕組みづくり」、そして住民の「現場を思いやる少しの配慮」。この3つがしっかり手を取り合うことで、これからも安心してごみが出せる暮らしを守っていけるはずです。


