ゴミを見れば「家計」や「性格」がわかる? マシンガンズ滝沢さんに聞く清掃員の日常

今回お話を伺ったのは、お笑いコンビ・マシンガンズとして活動しながら、現役のゴミ清掃員としても発信を続ける滝沢秀一さん。ご自身の経験を振り返っていただきながら、働く中で見えてきた人々の暮らしの様子や、思いがけない珍事件までお話いただきました。
芸人と清掃員 2つの顔を持つことになったきっかけ
――まず、清掃員のお仕事を始められたきっかけを教えてください。
滝沢:36歳の時に妻が妊娠して、出産費用が必要になったのがきっかけです。でも、いざバイトを探そうと思ったら、当時の求人雑誌は「35歳まで」という年齢制限ばかりで……。面接すら受けられない日々が続いたんです。そんな時、芸人仲間でゴミ清掃員として働いている人がいて「ここなら入れるよ」と紹介してもらったのが始まりですね。
――1日のスケジュールはどのような流れなのでしょうか?
滝沢:朝は早いですよ。遠い現場だと5時に起きて、6時半には出社します。まず「アルコールチェック」があって、これをクリアしないと働けません。住民の方と接することもある「公」に近い仕事なので、前日の飲酒にもかなり気を使います。8時から回収が始まって、多い時は清掃工場と現場を6往復くらいします。全部で10トンから12トンくらいのゴミを集めるので、忙しい時はお昼を食べる暇もないほどです。夕方4時頃に会社に戻って、洗車をして終わるという流れですね。
「ゴミは嘘をつけない」14年の現場で見た生活のリアル
――これまで回収した中で、「これは面白いな」と思ったゴミはありますか?
滝沢:ゴミにはその人の「物語」が見えて面白いんですよ。例えば、ダイエットコーラの空き缶ばかり出している人を見ると「あ、この人は健康を気にしているのかな」とか。あとは「面白さ」とは少し違うかもしれないですが、企業のホームページで「この製品が業界シェアNo.1です」って書いてあっても、ゴミを見ると全然その製品が出てこなくて「売れてないじゃないか!」って思ったりします(笑)。ゴミは嘘をつけないんです。
――ゴミを見れば生活が想像できるのですね。ほかに、思わず驚いてしまったゴミはありますか?
滝沢:とにかく「食品ロス」の多さには衝撃を受けましたね。お中元やお歳暮のシーズンになると、高級なゼリーセットが未開封のまま捨てられていたり、スイカやメロンが丸ごと何個も捨てられていたりするんです。「重いな」と思って袋を開けたら、新品のお米がそのまま入っていたこともあります。あとは、夏のペットボトルは本当にすごい量です。集めても集めても終わらなくて、夕方5時や6時までかかることもあります。自分の家から出すゴミは1袋でも、町全体を集めるとこれほどまでになるのかと、最初は本当にびっくりしました。
――清掃員の方は、食品ロスについて考える機会が多そうですね。
滝沢:そうですね。昔、高級住宅街で「エノキのバター炒め」が90リットルのポリバケツいっぱいに詰まって出されていたことがあり、それも衝撃的でした。重すぎて持ち上がらないし、あれは本当に謎でしたね。
――そういった“珍事件”はよくあるんですか?
滝沢:ゴミでケガをしたり、服が汚れたりといったことはよくあります。ほかには、仕事がハードすぎて「目が真っ赤」になったことがあって。病気かと思って調べたら、朝から夕方まで走り回る「過度な運動」のせいで毛細血管が切れていただけだったんです。その状態でライブに出てキレ芸をやるので、お客さんが怖がって笑ってくれない……なんてこともありました(笑)。
「当たり前の日常は誰かの手で作られている」ゴミ清掃を通じて意識が変わった
――清掃員として働く中で、嬉しい瞬間はありましたか?
滝沢:働き始めた14年前は、後ろの車にクラクションを鳴らされたり「ゴミ屋」と呼ばれたりして、職業差別を感じることもありました。それが、コロナで外出自粛が始まった頃から「ありがとうございます」と声をかけてもらえることが増えたんです。これは本当に嬉しい変化でした。
――在宅時間が増えたことで、ゴミ回収のありがたみを再認識したのかもしれませんね。滝沢さんご自身の意識の変化はありますか?
滝沢:自分が清掃員になってからは「ゴミ回収が止まったら街がどうなるか」を考えるようになりました。当たり前の「日常」って、実は誰かが手を動かして働いているからこそ維持されている。インフラの大切さを身にしみて感じています。そういった意識の変化から、今では自分の家でも、3日おきに冷蔵庫をチェックして食品ロスをなくしたり、コンポストを置いて生ゴミを家庭菜園の肥料に変えたり、ペットボトルをスーパーの回収に持って行ったりするようになりました。
――仕事で得た知見をご家族に教えることはありますか?
滝沢:僕がやりたいと思ってやっていることなので、特別お願いしたり教えたりはしていませんね。ゴミをいかに減らし、資源にできるかを考えるのが好きなんです。でも、最近ではうちの子が僕の様子を見て、ペットボトルのラベルを剥がしたりしていますよ。ゴミを減らすこと自体を楽しめるようになると、生活がより丁寧になっていく気がします。
お金持ちは無駄なゴミを出さない? 清掃員が見ている社会の一面
――清掃員として何万トンものゴミと向き合ってきた滝沢さんだからこそ見えてきた「社会の意外な一面」はありますか?
滝沢:地域によってゴミの質が全く違う、と感じます。実はお金がない時期に「お金持ちのゴミを研究して真似すれば、自分もお金持ちになれるんじゃないか」と思って調べたことがあるんです。そこで分かったのは、お金持ちのゴミには「意志」があるということ。自分が本当に価値を認めたもの以外には、1円たりとも出さないという決意のようなものを感じるんです。無駄な買い物をしないから、ゴミ自体も少ない。逆に、余裕がない人ほど安いものをたくさん買って、すぐに捨ててしまうのかなと考えたりします。「安物買いの銭失い」と昔から言いますけど、あれ本当なんだなと思いますね。こんなことを考えながらゴミを回収すると、面白いんですよ。
――ゴミがその人の生き方まで映し出しているのですね。
滝沢:そうなんです。ゴミはその人の姿を正直に映し出す鏡だと思っています。
ゴミを見ると暮らしへの向き合い方がわかる
「ゴミはその人を映す鏡」。滝沢さんのこの言葉に、ドキッとした方も多いのではないでしょうか。ゴミ袋に何を入れ、どう出すかという小さな習慣は、実は私たちの「暮らしへの向き合い方」そのものなのかもしれません。
つい無意識に捨ててしまっていたものを、一度立ち止まって眺めてみる。ゴミを「厄介者」ではなく「生活の一部」として整えていけば、家計も心ももっと豊かになるのかもしれませんね。
次回のインタビュー記事では、滝沢さんにお聞きした「ゴミの分別や出し方のポイント」をご紹介します。ぜひあわせてご覧ください。
